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出版物・研究成果等

証券経済研究 第34号(2001年11月)

アメリカ型企業ガバナンスの国際化

三和裕美子(明治大学助教授)

〔要 旨〕
 今日,アメリカでは「機関投資家による企業ガバナンス」という場合,機関投資家による議決権の行使を意味することが多い。近年アメリカの対外株式投資は拡大し,アメリカ機関投資家の海外企業への影響力は強まっている。諸外国はこのようなアメリカ型企業ガバナンスを積極的に取り入れようとしている。
 しかし,実際に議決権行使と運用パフォーマンス,または企業パフォーマンスとの明確な相関関係を見いだすことは困難である。ではなぜアメリカ機関投資家による企業ガバナンス,あるいはアメリカ型の企業ガバナンスの良さが喧伝され,世界的に広まりつつあるのであろうか。
 本稿では,社会システムおける機関投資家の役割という側面から考察することで,その理由を明らかにする。アメリカ的な企業ガバナンスは,1970年代におこった数々の企業の不祥事事件によって露呈した企業アカウンタビリティの欠如を回復させるための一手段であった。つまり1970年代以降,機関投資家の議決権行使により企業アカウンタビリティを追求するシステムが形成された。このシステムでは,株主の手によって企業を規律づけるという「株主民主主義」の理念が追求されてきた。
 アメリカ型企業ガバナンス・システムの普及は,これまであまりにも形骸化していた「株主民主主義」を喚起したという点で意義がある。ただし,アメリカ型企業ガバナンス・システムが最良かどうかということは別問題である。企業アカウンタビリティ・システムにおいては,その他の利害関係者はそれぞれの手段で参加する権利を有しており,これらを総合的に捉えるが必要がある。

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