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出版物・研究成果等

証券経済研究 第31号(2001年5月)

ヨーロッパの株式市場統合

吉川真裕(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 ヨーロッパの株式市場では単一通貨ユーロの導入によってこれまで以上に国境を越えたクロスボーダー取引が増えているとはいえ,各国の受け渡し・決済に関わる基盤の統合が不十分であり,各国の法制度や取引規則の違いが存在することなどから,ユーロ導入諸国を1つの国のように見なして各業種間で資金の再配分を行うという動きは予想されたほどには進んではいない。ヨーロッパ各国の証券取引所はこれまでも国境で分断された各国の株式市場統合を模索してきたが,証券取引所の合併や統合という形での株式市場統合は各国の証券取引所や会員業者の存立基盤を危うくするという反対から予想されたほどには進展してはいない。
 1998年7月に発表されたロンドン証券取引所とドイツ取引所の戦略的提携,これを受けてイギリス,ドイツ,フランス,スイス,オランダ,ベルギー,イタリア,スペインの証券取引所が1998年11月に結んだ株式市場統合協定,2000年5月に発表されたロンドン証券取引所とドイツ取引所の合併計画,および新取引所とアメリカのベンチャー株式市場ナスダックとの間で交わされた新たなベンチャー株式市場の開設計画,さらには2000年8月にストックホルム証券取引所を傘下に持つスウェーデンのOMグループが試みたロンドン証券取引所の買収計画はいずれも失敗しているが,2000年9月にはフランスのパリ取引所,オランダのアムステルダム取引所,ベルギーのブリュッセル取引所の合併が実現しており,2001年6月にはスイス取引所がイギリスのトレードポイント証券取引所に取引システムとともに優良銘柄の取引を移管する計画が進行中である。
 まだ将来のヨーロッパ株式市場統合に結びつくような道筋は現時点では見えないものの,このようにヨーロッパでは各国の証券取引所の連結・統合を通じた株式市場統合が模索されている。

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