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出版物・研究成果等

証券経済研究 第30号(2001年3月)

新興国の社債市場:マレーシアのケース

丸淳子(武蔵大学教授・当研究所主査研究員)

〔要 旨〕
 マレーシアでは1997年,タイの通貨危機の伝染をうけて,金融システムがその脆弱さをさらけ出すこととなった。東南アジア経済の高い経済成長に歩調を合わせるように,銀行システムおよび証券市場の中でも株式市場を自由化し,その拡大を政策当局が音頭をとる形で進めてきた。しかし,金融市場には予想以上のリスクが存在し,そのマネージメントに失敗したのである。マレーシアの政策当局は金融リスクの分散化を図るために,債券市場,とくに,民間企業の資金調達のための社債市場の改革を押し進めている。
 マレーシアの社債市場の特徴は公募債が少なく,80%以上を私募債で発行している。ただし,社債発行には格付けを取得することが義務づけられているので,格付け機関は非常に重要な役割を演じている。しかし,2つの格付け機関の株主はマレーシアの主要な金融機関である。私募債の流通 市場の参加者も主要な金融機関であり,私募債市場は外部からみて不透明であった。しかし,流通 市場の情報開示がBIDS(債券情報・伝達システム)の設立や流通市場の売買高拡大で大きく変化する予兆も感じられる。
 社債市場改革の最大の要件は公募債の拡大である。そのための規制緩和も導入されているが,公募化の動きは遅いようにみえる。公募債の流通 市場を取引所(KLSE)だけにしているのでは大きな変革は困難であろう。

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