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出版物・研究成果等

証券経済研究 第30号(2001年3月)

我が国社債発行市場政策の史的考察

後藤猛(経済評論家)

〔要 旨〕
 我が国の社債発行市場は近年矢継ぎ早の改革が進められ,新しいシステムで21世紀を迎えたが,明治以降の企業金融における社債発行の政策的位 置付けを見ると,いろいと制約が課せられ自由な発展を妨げられていた時代が長かった。
 明治初期の商法においては社債への認識は低く株式との区別も不分明で,社債の発行は株主総会決議事項であったり,払込資本金までを発行限度とするなどの規定がおかれた。驚いたことに株主総会規定は昭和50年まで,発行限度規定は平成5年まで残されたのである。
 社債の分類の中でも金融債については明治30年代から優遇措置がとられ,これを原資として間接金融体制を強化し産業発展を促進するという政策が採られたが,これは戦後の経済復興や高度成長期にも続けられ,個々の企業の社債発行についてはむしろ制約的政策がとられたのである。
 昭和10年代の戦時統制経済体制下においては社債市場は統制的資金配分の場となつたが,戦後も社債統制システムは継続し,大蔵省・日銀をバックとする“起債会”の統制は昭和63年まで続いたのである。
 戦後GHQは米国流の証券金融システムを持ち込もうとしたが,それは中途半端に終った。
 しかし,昭和50年代の後半となると,起債会統制下の社債発行市場はついに空洞化の危機に直面 し,平成時代に入り急ピッチで政策転換が促進されることとなった。

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