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出版物・研究成果等

証券経済研究 第26号(2000年7月)

M&Aについて

福光寛(成城大学教授)

〔要 旨〕
 証券市場が活性化する背景にしばしばM&Aの存在がある。それゆえ証券市場の理解においてM&Aについての洞察を欠かすことはできない。小稿は,近年精緻化されるようになった経営学的な観点からのM&Aの説明を体系的に展開したものである。
 伝統的に,M&Aは統合による節約効果(cost savings effect)によって説明されてきた。しかし近年,その説明方法は,企業戦略的観点を重視したものに変化しつつある。小稿はこの変化を,合併に追い込まれる企業の論理よりも,企業買収を経営戦略として仕掛ける側の企業の論理が優先し始めている社会状況への対応だと指摘している。
 新しい説明方法のキーワードとして小稿ではagility, critical mass,そしてcompetenceの3つを挙げた。経営戦略の展開のスピードが優先されるからこそ,市場におけるシェアが決定的であるからこそ,買収が選択される。また近年のIT革命は,企業間の水平的統合への傾向を強めている。
 小稿が明らかにした見地では,M&Aによって実現すべきものはcompetenceの維持・移転である。それを実現するためには,経営者はcompetenceの内容を理解し,その再生と拡大に努めねばならない。ただしM&Aに成功したとの評価を経営者が得るためには,経営者には以上に加えて環境の変化に適切に対応することも求められる-M&Aの成功例が結果 として少ないのはこのような事情があるからである。

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