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出版物・研究成果等

証券経済研究 第25号(2000年5月)

証券市場の制度的インフラストラクチャー(下)
―約定後経済行為の機能分析―


福本葵(大阪研究所研究員)

〔要 旨〕
 「証券市場の制度的インフラストラクチャー(上)」(証券経済研究 第23号)では,機能分析の重要性,売買約定後の経済的行為には,どのような機能が考えられるかについて述べ,日本における売買約定後の機能分析を行った。
 売買約定後の経済的行為には,機能1:証券管理機能,機能2:権利移転機能,機能3:権利実現機能,機能4:代金移転機能,機能5:安全保証機能があると考える。本稿では,これらの機能がアメリカの売買約定後の諸制度において,どのように実現されているかを分析する。次に,アメリカと日本の比較機能分析を行う。アメリカの中央預託機関であるDTCへの預託が発行済株式総数の90%以上であるのに対し,日本の保管振替機構への預託は,30%弱となっている。日米の保管振替制度の最も大きな相違点は,機能3:権利実現機能にある。アメリカが間接方式と呼ばれる制度を採用しているのに比して,日本では直接方式と呼ばれる制度を採用している。これが権利の実行の差異を導いている。また,アメリカでは,清算会社と呼ばれる機関がカウンターパーティとなって,決済に関する債権債務を保証している。日本では,東京証券取引所が1999年5月決済分より,大阪証券取引所が11月より,自己の取引所で行われた取引について,清算機関方式を導入している。それまでは,カウンターパーティになる清算機関という制度は導入されていなかった。
 本稿の最終的な目的は,前述の機能について,公的機能,私的機能の分類を行うことにある。どの機能が,単一の機関を設け,統一的なシステムにした方がよい機能であるか,どの機能が競争に委ねた方が適当な機能であるかを分類する。
 そして,最後に,証券売買約定後の諸制度について,今後の展開を考えたい。

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