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出版物・研究成果等

証券経済研究 第24号(2000年3月)

不良債権問題と流動化の将来

深浦厚之(長崎大学教授)

〔要 旨〕
 資産流動化・流動化の機能と意義について,不良債権問題をきっかけにさまざまな議論が展開されてきた。ここではそうした議論を整理し,流動化の資金循環機能・金融仲介機能がスムーズに機能するための条件を4つの要素に分解して問題を整理するとともに,SPC法(「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(1998年)の略称)を通 して現行制度の特徴を考える。
 非流動的な資産が流動性を必要とする部門に滞留するときに発生する機会費用が,不良債権問題の本質であるとすれば,流動化商品市場は流動性を投資家各層に分配するというマクロ的な意味を持っていると評価することができる。言い換えれば,流動化商品市場とは,証券という媒体を介して流動性の取引を行う機構である。流動性にはリスクが付随するということを考えれば,それはまた資本市場を補完するという役割も併せ待つことになる。こうした機能を具体化させるために,既にいくつかの新規立法がなされている。しかし,流動化に体現された新しい金融技術が,十二分にその効果 を発揮できるにはいたっていない。もっとも新しい流動化関連立法であるSPC法では,「コーポレートガバナンスによる投資家保護」「情報開示」を重要な柱として形作られており,先行立法の不備を部分的に補うことには成功した。しかし,残された問題も少なくない。特に投資家保護に関しては,投資家が情報劣位 なのではなく資金調達側が投資家に関する情報を十分に持たないという方向から評価したほうが,情報開示制度やターゲットレイティングなど証券化の実務と整合的に解釈できる。今後,その改善にあたっては,金融システムや資金循環機能の将来像の中で証券化をどのように位 置づけていくかという視点が不可欠である。

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