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出版物・研究成果等

証券経済研究 第24号(2000年3月)

グラム=リーチ=ブライリー法と金融統合―グラス=スティーガル法の改正と証券業務―

坂本正(熊本学園大学教授)

〔要 旨〕
 1999年11月12日に成立したグラム=リーチ=ブライリー法はグラス=スティーガル法の66年ぶりの撤廃と報じられたが,これはグラス=スティーガル法20条と32条およびこれに関連する1956年銀行持株会社法の当該条項を撤廃することで,銀行・証券・保険の相互参入を可能にするものであり,その狙いはアメリカ金融サービス産業の国際競争力の強化であった。
 従来,証券業界はこのようなグラス=スティーガル法の改正には反対であったが,銀行持株会社による証券業務への実質的な進出が顕著なため保険会社とともに,持株会社による相互参入を支持する側へと方向を転換した。また1998年秋に認可されたシティコープとトラベラーズの合併は実態先行の金融統合の進展を示すものであった。その中で上院の金融サービス現代化法(S.900)と下院の金融サービス法(H.R.10)の審議過程の争点となったのは,持株会社による金融業務拡大を主張するFRBと国法銀行およびその直接子会社による金融業務拡大を主張するOCC・財務省との対立であった。しかし,妥協の結果 ,銀行は金融持株会社の子会社を通じて証券業務に進出できるだけでなく,地域における中小の国法銀行も直接にレベニュー債の引受けが認可され,また直接子会社を通 じてレベニュー債の引受け認可と保険引受けと不動産開発およびマーチャント・バンキングを除く金融業務が認可された。このように監督当局の対立=競争が商業銀行の証券業務の進出を多角的に許容することになったことに注目したい。

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