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証券経済研究 第18号(1999年3月)

債券格付けの意味と役割

岡東務(日本格付情報センター業務推進部長)

〔要 旨〕
 債券の格付けはこの数年の間に人々に広く知られるようになった。おそらく,1997年秋に北海道拓殖銀行や山一証券といった著名な金融機関が相次いで破綻に追い込まれた時に,その引き金を引いたのがほかならぬ 格付機関である,と名指しをされたことと無縁ではない。
 しかし,格付けは本来債券の発行を通じて資金を調達したい発行体が,債券の発行を円滑に行うために,発行体とは利害関係のない第三者の格付機関に,当該債券の信用リスク,すなわち債券の元利金の支払の確実性の程度の測定を依頼するものである。債券を購入する投資家はその格付けなどをもとに債券を購入するかどうかを決めるが,格付けはその際に参考にされる多くの投資情報の中の1つにすぎないのである。格付けが格付機関の単なる意見といわれる理由である。日本では,格付けの歴史が浅い。しかも導入の経緯は行政主導のやや強引とも思える手法に頼らざるを得なかった。これに対して格付けの先進国である米国では,投資家の要求から自然発生的に定着していった。両者では様相をかなり異にする。
 本稿では,格付けの意味と役割を原点に立ち返って考察するものである。格付けは,記号で表される格付結果 情報と当該債券の信用リスクについて多面的に分析した文章情報からなる。日本では発行体に格付取得を義務付けしたことから発行体の関心は結果 情報のみに集まった。いきおい格付機関の性格や特徴についての正確な理解が得られることもなかった。一方,格付けの本来的な利用者である投資家は債券,特に普通 社債の発行が少ないことや購入した債券を満期まで保有するという投資姿勢から,信用リスクに対する切実なニーズが乏しかった。格付機関も質量 とも十分な投資情報を提供してこなかった。
 しかし,日本においても格付けが本格的に定着する条件が整いつつある。すなわち,債券の発行高の増加,投資家層の拡大,信用リスクの顕在化,調査コストの節約である。特に投資家の行動が積極化しようしている中で格付機関には投資家の期待に応えうるだけの文章情報の提供という大きな使命がある。

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