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出版物・研究成果等

証券経済研究 第18号(1999年3月)

金融制度改革と社債制度改革

松尾順介(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 国内公募普通社債の発行額が急速に拡大している。1998年の発行額は,年初から月間1兆円を超える起債が相次ぎ,暦年ベースでは12兆7,849億円に達し,初めて10兆円を上回るとともに,過去最高の起債額となった。1980年代においてすら年間発行額が1兆円に満たない市場であったことを振り返れば,最近の拡大は単に急速なだけでなく,平成不況の下,企業の設備投資が冷え込む中で生じていることが注目される。
 現在の社債市場の拡大の具体的な背景として,金利低下による起債環境の好転や償還資金の調達需要といった要因もあるものの,制度的要因を無視することはできない。すなわち,93年商法改正によって,長年にわたって社債市場を規制してきた社債受託制度が改革され,大幅な規制緩和が実現したことが大きく作用している。なぜならば,この制度改革によって,社債受託手数料を中心に発行コストの大幅な低下が実現したからである。そして,この制度改革は社債市場の量 的拡大の契機となっただけでなく,社債市場のあり方を変えるという点でも大きな意味をもつものであった。
 したがって,本稿ではその規制緩和がいかなる力学のもとに実現したのかを考察する。具体的には,社債受託制度が93年の商法改正によって改革されるに至る経緯とその改正によってもたらされた結果 が考察対象となる。まず,金融自由化の進展によって社債制度改革の基盤が芽生え始めたにもかかわらず,有効な改革がなされなかったために,80年代に国内普通 社債市場の空洞化といわれる事態が生じたことを概観した上で,次に金融制度改革が92年に子会社相互参入という形で決着を見たことが契機となって,93年商法改正による社債受託制度改革が行われたことを考察する。そして,その結果 社債市場にどのような変化がもたらされたのかを検討する。

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