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出版物・研究成果等

証券経済研究 第18号(1999年3月)

証券市場にとってグローバルスタンダードとは何か

小林和子(東京研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 近年,経済・金融関係で用いられた用語が速やかに一般化していくスピードが加速化されている。経済構造における金融の領域が良くも悪くも拡大して一般 社会に覆いかぶさり,隠れていた実態が暴露されつつある故でもある。市場の空洞化,ビッグバン,グローバルスタンダード等の用語は,今や経済と限らず,社会,文化の各分野における空洞化,ビッグバン,グローバルスタンダードという使われ方をする。そうなると,逆に,経済,金融で本来使われ始めたときの語感も変化を受ける。現在進行中の金融・証券ビッグバンの過程で,改革の方向性の端的な表現として使われはじめた「グローバルスタンダード」という言葉は,もともとが正確な英語ではなく,使われ方もいろいろであったが,それだけになかなか反論もしにくいという典型的な拡散型の用語例であろう。
 グローバルスタンダードというからには,必ずやその実態は国際市場との関連から生じている。戦前期証券市場の初期からあった日本市場と海外市場との関連をたどると,戦前期は有担主義を(言葉としては用いていないが)実質的なグローバルスタンダードとして日本市場が受け入れたことがわかる。戦後は昭和23年証券取引法,売買取引再開3原則,及び有担主義の大きな変遷をみることで,グローバルスタンダードの歴史性と可変性を認識できるであろう。
 現段階のグローバルスタンダード認識に関しては,この数十年金融・証券市場のグローバライゼーションが加速化する過程で,強大な現実の国際市場の持つデファクトスタンダード,すなわち過去から現在の市場の支配力の堆積と,急速に一体化しつつある現在の市場関係を調整し,運営するための新たなスタンダードの形成,すなわち現在から将来の市場の参加者による自主的なルールの形成とが,混在していると思われる。証券市場にとって重要なことはむしろ後者であり,前者のデファクトスタンダードは参加者の判断で必要なものを後者に組み入れるということになるのではないか。

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