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出版物・研究成果等

証券経済研究 第15号(1998年9月)

ロンドン証券取引所における新取引システムの導入(中)

吉川真裕(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 1997年10月20日,ロンドン証券取引所はSETSと名付けた新しい取引システムを導入した。これはSEAQと名付けられた従来のクォートドリブン方式とは異なり,指値注文板を持つオーダードリブン方式の取引システムである。SEAQを導入した1986年10月27日のビッグバンと呼ばれる市場改革から11年が経過し,この新取引システムの導入は第2のビッグバンとも呼ばれている。
 1995年11月30日にロンドン証券取引所の理事会でオーダードリブン方式の導入が決定されてから1997年10月20日に導入されるまで約2年の歳月が流れたが,オーダードリブン方式の導入決定が難航したのと同様に,実際にオーダードリブン方式が導入されるまでにも数多くの紆余曲折が見られた。1996年1月の第1回討議資料,1996年5月の第2回討議資料,1996年10月の原案,1996年12月の原案の修正,1997年1月の最終案,1997年4月の最終案の修正,1997年7月のWPAに関するSIBの決定,そして1997年10月導入直前の規則変更と,新取引制度の取引要綱は何度となく変更された。
 なかでも最も特筆すべきは,指値注文板を通じての取引と相対で行われる取引の間を結ぶinteractionと呼ばれる指値注文板の消化義務が取引開始の6カ月前になって廃止されたことであろう。機関投資家の大口注文をマーケットメーカーが一手に引き受けるという従来のロンドン市場の特徴を生かしながら,投資家が指値注文板を直接用いて取引執行コストを削減するという企ては,他の市場では見られない独特の様相を呈していた。さらに,個人投資家を中心とした小口取引はT+10の非標準決済取引を好み,こうした需要も大手マーケットメーカーが最良気配での自動執行を通 じて満たしてきたというロンドン市場特有の事情もオーダードリブン方式の導入に影響を及ぼしていたようである。

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