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出版物・研究成果等

証券経済研究 第14号(1998年7月)

シンガポールの証券税制,証券規制

木村由紀雄(和光経済研究所ベンチャー企業調査部長)
古川文久(だいこう証券ビジネス企画開発部)

〔要 旨〕
 シンガポールの証券税制は,経済発展戦略と結びつけられていることが大きな特徴である。これは先進工業国を追うアジア諸国には共通 しているが,特にシンガポールは国内市場の狭隘な島国であることを考慮し,オフショアとの関係に配慮した構造になっている。しかも,アジアの経済発展の先頭を切っていることから,最近では資本輸出国としての相貌も見せ始めている。
 税制による経済活動へのインセンティブは木目細かな仕組みになっているが,証券税制もそれに見合った配慮がなされている。配当課税は所得への二重課税を排し,法人の投資活動を支援している。個人についても,証券投資が魅力を持つよう,様々な工夫がなされている。
 シンガポールの証券市場はイギリスの伝統を踏襲し,証券取引所の自治が極めて強かった。しかし,不正取引などが目立つ一方,証券市場の国際化,情報技術の発展などがそうした伝統を許さなくなった。
 過去四半世紀の間,いくつかの事件を契機にシンガポール証券市場の規制は大きな変貌を遂げた。今はMAS(通 貨庁)が全面的に管理する市場になっているが,証券市場の自己規制も有効に作用しており,政府規制と自己規制がうまくかみ合ったシンガポール・モデルといえる仕組みを作り上げている。
 86年に制定された新証券業法は,証券業界がその後の試練をくぐり抜けるのに役立った。証券業者がそれ以前と違って,破綻することなくその役割を果 たしたからである。証券規制の焦点が証券業者の信用,経営基盤の強化に置かれてきた成果 と考えられる。
 業者規制の代表が免許制である。86年証券業法によって,免許の基準が細かく定められ,ハードルが高くなった。証券業者の財務内容に非常な注意が払われている。80年代までの混乱の原因がここにあるという判断からであろうが,その判断は正しかったといえよう。

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