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出版物・研究成果等

証券経済研究 第13号(1998年5月)

社債ディフォールトとディストレスト証券市場

松尾順介(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 社債のディフォールトによって,一般の投資家が直接損害を被る事例が出始めている。例えば,ヤオハンの経営破綻では,社債管理会社(銀行)がディフォールト債の不買取りを表明したため,個人を含むかなりの投資家が損害を被った。したがって,ヤオハン債は国内公募社債のディフォールトで,戦後初めて投資家が実損を被った事例となった。
 日本でも,ディフォールト社債をメインバンクが買い取らないことになると,米国のように自己責任で社債投資が行われるようになるものと思われるが,しかし米国と比較するとまだまだ未成熟な点も多い。それはなによりも,米国ではディフォールトした社債などが売買の対象となり流動性が付与されていることがあげられる。すなわち,バルチャー・ファンドに代表される投資家,また仲介業者,情報ベンダーも存在し,全体として相当厚みのある市場,いわゆるディストレスト証券市場を形成している。日本では,破綻企業の証券については,上場株式が取引所で一定期間売買されるだけで,社債については売買される市場はほぼ存在しないのと大きく異なっている。日本では,企業はいったん破綻すると第三者には情報も入手できず,売買も不能な状態になるのに対し,米国では破綻企業の情報も公開され,売買もなされる点に大きな差があるといえる。しかし,日本企業も容赦ない選別 にさらされるようになれば,米国のように破綻企業を対象とする市場が形成される客観的条件があると思われる。
 本稿では,まず最近の日本の社債ディフォールトについて概観する。そして,今後の日本のディフォールト社債処理が投資家の自己責任原則に基づいた米国型のものとなることを示唆する。次に,米国のディストレスト証券市場を考察する。最後に,以上の考察をふまえた上で,日本におけるディストレスト証券市場の成立条件を探る。

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