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証券経済研究 第110号(2020年6月)

“ケインズの美人投票”と証券界の「テキストデータ活用」型AI

広田真人(元東京都立大学客員教授)

〔要 旨〕
 近年,人工知能(AI)に対する期待が様々な分野で急速に拡大しており,それは資産運用分野もその例外ではない。従来ファイナンスとは無縁に近かった「人工知能学会;金融情報学研究会」等でも盛んにこの問題が議論され発信されている。
 しかし,AIを資産運用分野にどう生かすかと言えば,それは二つのルートに分かれる。一つは企業のFVの推計ルートへの寄与であり,他方はマーケットを中心に発信されている既存の多種多様な情報を超スピードで要約し,改めて発信するルートへの寄与である。ではAIは上記二つのルートのどちらに寄与するかといえば,後者への寄与であるとするのが本稿の立場である。つまり,マーケットをビートしようと思うなら,当該企業のFV探究は無視し当該企業を目巡っての世間ないしマーケットに充満している評価を観察し,世間で人気のある企業に投資する方が賢い,これが“ケインズの美人投票”の主旨である。こうした観察の手段としてAIは確かに優れているであろうし,そういう意味ではAIは資産運用分野に寄与する存在であることに間違いないだろう。
 勿論,前者への寄与もない訳ではないが,それは極めて短期の将来を射程に収めているに過ぎない。勿論現実の多くの投資家にとっては上記の意味でごく短期の収益動向予想だけで充分かもしれないが,資本市場の本来の役割から言えば,「建前に過ぎない」とはいえ長期的視点からの企業価値評価こそが最も大切である。
 無限の将来に渡る企業収益の動向をかなわぬまでも推計するに当たって,AIがどのように寄与出来るかに思いを巡らす時,「自動車の自動運行」とは本質的に困難の次元を異にすることは明白であろう。

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