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証券経済研究 第108号(2019年12月)

証券業界の構造変化について—平成年間の30年—

二上季代司(当研究所主席研究員)

〔要 旨〕
 平成の約30年(1989〜2019年)を経て,戦後のわが国証券業界を特徴づけてきた従来の構造的特徴は根本的に変化した。本稿では,①業務内容,②競争,③経営の3つの観点から,証券業界の構造変化を整理した。
 第1に,「業務特性」をみると,大手から中小までどの証券会社も株式ブローカー業務に収益の大部分を依存するという画一性が消失した。業界全体として1990年代には純営業収益の5割以上を占めていた「委託手数料」がいまや15-6%程度となり,代わって委託・引受・募集の各手数料いずれにも計上されない「その他手数料」が最大の収益源となった。加えて,独禁法改正により持株会社を頂点とした「グループ経営」が可能となり,子会社を経由した他業進出,国際的展開,業務分野の多様化・多角化等が進んだ。
 第2に,競争構造では「大手4社の寡占体制(4社寡占)」が瓦解し,代わって外資系証券およびメガバンク系証券が台頭した。競争領域は,大きく法人営業(ホールセール)と個人営業(リテール)に分離し,固有の競争が展開されるようになった。従来,法人営業の核心とされる幹事競争は個人営業における株式出来高競争に支えられてきた。しかし最大の収益源となった「その他手数料」の伸長が,ホールセール専業の外資系証券によってもたらされたことは,ホールセールにおける競争のあり方を変え,それがまた,手数料自由化とも相まってリテールでの競争のあり方に影響を与えている。
 第3に,「大手証券vs中小証券」という経営形態の二極分化も消失した。大手証券は全国に多店舗を展開,社員外交によって営業活動を展開してきた。忠誠心の高い社員営業員に目標を持たせ「株式出来高競争」に打ち勝つことが,幹事競争の主要手段とされた。しかし,これは費用の固定化をもたらすため,旧大手4社は引受・募集業務,投信業務などの収入源多様化によって固定費を吸収してきた(大手総合証券経営)。他方,大多数の証券会社は株式業務依存からくる収入の変動に対処するため,費用の固定化を抑えようと小規模かつ歩合外交へ傾斜した(中小証券経営)。この両極に徹底できなかった準大手証券は,不況のたびに「証券再編成」の舞台となった。こうした経営形態の二極化はもはや見られない。経営形態もまた多様化したのである。

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