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証券経済研究 第107号(2019年9月)

何が地方銀行を海外有価証券投資に駆り立てたか

山口昌樹(山形大学人文社会科学部教授)

〔要 旨〕
 地方銀行が海外有価証券投資に傾倒しながらも巨額の損失を計上したことが注目を集めている。経営体力に比して過大なリスク負担をしたことやリスク管理体制の不備について指摘されているが,地方銀行を海外有価証券投資に駆り立てた要因について詳細な究明はまだなされていない。本稿は2011年度から2017年度という地方銀行による海外有価証券投資が急増した時期を分析期間とする。地方銀行の投資行動を説明する複数の仮説を設定し,有価証券報告書等に記載されている個別銀行の財務データを利用してパネルトービット分析を行って仮説が妥当であるかを検証する。
 分析の結果,第一に地方銀行は国内有価証券より少しでも有利な利回りを求めて海外有価証券投資に踏み込まざるをない状況にあったことが判明した。第二に,銀行の中核業務である金融仲介が不振であるという構造問題が深刻な銀行ほど海外有価証券投資へ傾倒していることが分かった。第三に,国内における有価証券投資の利回りが低下するほど海外有価証券投資の比率は上昇しており,利鞘の低下を国内の有価証券運用が補完しきれていない状況が浮かび上がった。第四に,金融仲介業務の不振を埋め合わせる役割が期待される役務収入の比率が高ければ海外有価証券投資への依存度が低くなることも分かった。

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