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証券経済研究 第106号(2019年6月)

ドイツの中小企業と地域金融機関—貯蓄銀行グループとの関係性を中心に—

黒川洋行(関東学院大学経済学部教授)

〔要 旨〕
・ドイツの中小企業は,EU経済の牽引車であるドイツ経済にとって重要な存在である。
・ドイツの全企業数のうち99.3%は中小企業であり,GDP(付加価値)に占める割合は,約50%近くあり,従業員数では約60%以上を占めている(2016年)。
・中小企業の資金調達では,銀行借入のシェアが大きく,他人資本に占める対銀行債務の割合は,中小企業全体では43%となる。
・中小企業の自己資本比率は,近年上昇傾向にあり,2016年には28.3%である。また,自己資本利益率(ROE)や総資本利益率(ROA)についても上昇傾向が続いている。
・貯蓄銀行グループは,長い伝統のなかで,「地域原則」にしたがい,リレーションシップ・バンキングを通じて,地元・地域に強固な基盤を持ちながら,中小企業との間で金融パートナーとしての地位を築いてきた。
・貯蓄銀行グループは,ドイツ全体の対企業・自営業者向けの融資残高のうち,30.8%という最大シェアを有するが,これはメガバンク4行(大銀行)合計である11.6%の実に約3倍のシェアとなっている(2017年末)。
・リーマン・ショック直後に,メガバンクの貸出残高が対前年同期比でマイナスになった際も,貯蓄銀行と信用協同組合の2つのグループは,貸出残高を増やしている。
・中小企業側がかかえる最大の懸念事項は,労働市場の逼迫のなかで,有能な専門労働力の確保という問題である。
・金利上昇リスクに対しては,中小企業の銀行借入の大半が中長期の期間であるため,直接的な打撃にはならず,数年をかけて影響を及ぼすものと考えられる。
・英国のEU離脱問題や米中貿易摩擦といった国際経済の環境変化は,ドイツの中小企業にとっても不確実性を与えるが,ドイツの中小企業は,財務構造を堅固にしており,ある程度の対抗力をつけてきている。

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