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証券経済研究 第104号(2018年12月)

マネジメント・バイアウト(MBO)における株主間利益相反の回避と
買収プレミアムの決定


志馬祥紀(帝塚山大学経済学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 我が国の上場企業を対象とするMBOは,バブル経済の崩壊後,株式市場の低迷時に本格化し,株価が上昇した昨今においても,一定数の取引が継続的に実施されている。これらMBOについては経営者兼買収者である株主と,他の一般株主との利益相反が潜在的な問題となり得ることもあり,取引に批判的な意見も多くみられる。しかしMBOの事例が一定量継続している現状は,取引に一定の合理性がみられる-より正確にはMBOの外形的な手続きや買収プレミアムに示される金銭的な条件が投資家や市場によって許容されている-可能性を示唆している。
 本研究では,こうした問題意識に基づき,MBOにおける論点を記載,実務慣行に大きく影響したと考えられる裁判判決及び政策指針,実務上の対応を述べた上で,MBOにおけるプレミアムの決定要因について実証分析を行う。
 実証分析の結果,買収プレミアムの決定に際しては,対象企業の財務状況や買収者のMBO前の保有株式比率等の変数が一定の説明力を有しているものの,最も重要な要因は,先んじて実施されたMBO事例の買収プレミアム数値であった。この結果が示唆するところは,―裁判や政策上指針が,MBOにおける利益相反の回避ための実務を整備したことに加えて-株式市場におけるプレミアムの設定プロセスに一定の合理性がみられることで,取引について社会的な許容の動きが進むことになったと考えられる。

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