トップ  >>  出版物・研究成果等 >> 証券経済研究 2018年度 >> 第102号(2018年6月)

出版物・研究成果等

当研究所の出版物の購入を希望される方は、「刊行物購入について」をご覧下さい。

証券経済研究 第102号(2018年6月)

損切りというリスク管理について—ホームメード・オプションとその他の経済的帰結

辰巳憲一(学習院大学名誉教授・日本大学大学院講師)

〔要 旨〕
 運用の失敗に備える準備は,どのような場合でも,必要であり重要である。損切りルールとは,損失あるいはその率の閾値を事前に設定し,保有銘柄について適用する売却のルールである。様々あるリスクのうちでも,市場リスクを管理する方法の1つとして損切り(ロスカット)は位置付けられている。
 しかも,日本の一部の市場では下げ局面において金融機関によるロスカットの売りが新聞等で報道され,市場価格を決める一大要因として位置付けられる位重要である。しかしながら,世界的な評価を獲得した「投資」関連の書籍で損切りのルールが解説されることは無い。
 本稿では,損切りのルールを作るべきか,どう作るべきか,を課題の洗い出しから初めて,ヒューリステックに(直観的判断方法で)実用的な損切りルールを展開する。比較的単純なケースでは,損切りルールは自身や自社で行うオプション買いに相当しており,市場で購入するオプションと同様な効果を持つことを明らかにする。そして,多数銘柄からなるポートフォリオにおける損切りルールについても様々な視点から考察する。
 分析の結果損切りとは,採用するか採用しないか,採用するとすればどの程度するかのリスク回避度決定問題である。損切りルールを作らないのは高リスク投資そのものであることがわかった。付録には,株価推移が少し複雑な状況における,ナンピンと損切りルールについて展開しておく。
 なお本稿では,損切りのため売却するにしても保有する全量を売却するものとし,市場環境によって損切りする売り数量を変えるというようなポートフォリオ問題,さらには,市場の需給状況によって変わる売却に関するトレーディング上の問題,も考慮しない。そして,事業展開によって証券を売却する必要が出てきてしまうような,余裕資金で運用している場合に適用することも想定していない。

全文PDFダウンロード

Get ADOBE READER
PDFの閲覧にはAdobe Readerが必要です。

お探しの出版物が見つからない場合は「出版物検索」ページでキーワードを入力してお探しください。