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証券経済研究 第101号(2018年3月)

“貯蓄から投資へ”運動への素朴な疑問

広田真人(中央大学ビジネススクール非常勤講師)

〔要 旨〕
 『貯蓄から投資へ』とは,それ自体は家計の資産選択の話である。即ち,この議論の中では,「貯蓄」とは銀行預金であり,「投資」とは証券投資(株式投資)のことである。
 ところで,投資家サイドが銀行預金を取り崩して株式投資を行おうにも企業サイドがエクイテイファンナンスを行わねば,株式投資にはならない。ところが,現代の成熟した資本主義社会にあってエクイテイファンナンスは極めて少ない。
 となると,銀行預金を取り崩した資金が株式投資に向かうルートは流通市場経由しかありえない。ところが流通市場での株式取得は,株主間の“持ち手変換”に過ぎず,企業への新たなCFの移行は100%ゼロである。これが如何なる意味で“企業への応援”になると言えるのか?『貯蓄から投資へ』というスローガンの破綻は明らかである。
 尚補足的論点として,流通市場での株式取得が“株価上昇”をもたらす可能性は否定できないかもしれない。しかし,単なる需給バランスの変化による株価上昇はごく短期的にはあり得ても,それ以上となるとバブルそのものでしかあり得ない。
 従って,株価上昇が企業のFVの増加をもたらすロジックが示されない限りこの議論は成立しないし,それは<資本コスト低下>促進ルートを持ち出しても説明力をもたないであろう。

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