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証券経済研究 第101号(2018年3月)

金融危機後の米国金融規制および監督の取組み
—FDIC(米国連邦預金保険公社)を例に—


鈴木誠(文教大学経営学部経営学科准教授)

〔要 旨〕
 本論文は,米国の連邦預金保険公社(以下,FDIC)における主要業務となる,保険業務,管財業務,規制・監督業務のうちで規制および監督業務に焦点を当て,米国金融危機(リーマンショック)後の米国金融市場の安定化の枠組み作りの経過を観察したものである。
 FDICの規制および監督は概ねバーゼル規制に起因する部分と国内要因に起因する部分とに区分することができる。特に,金融危機以前はこれらの両者はある意味で独自のポリシーに基づいていた。しかし,金融危機が生じると,金融破綻を事前に予防する目的のバーゼル規制は後手に回り,米国内での規制,監督,そして金融再生の制度設計が優先することとなった。さらに,金融危機後の恒久的な施策においては,バーゼルⅢにおける予防的な措置とドッド-フランク法の規制する内容には同じ方向性を見ることができる。
 バーゼルⅢでは金融機関およびノンバンク金融会社における倒産リスクを計数化し,必要とされる自己資本を常に確認するだけでなく,リスク基準の最低自己資本に加えてTier 1 自己資本に特定されたバッファーを加えて保持しない場合は,銀行グループの資本配分と特定の変動賞与支払いに制限を設けるようにするなどペナルティーを導入した。
 一方,ドッド-フランク法およびボルカールールでは,金融安定化と金融機関の破綻処理,そして金融業務の規制が中心とされる。金融安定化のために金融安定化評議会が設置され縦割り行政の問題を解消する措置がとられ,同法第Ⅱ編ではFDICによる金融会社の破綻処理が定められている。ボルカールールはIDI(保険加入金融機関)を対象として自己勘定取引の禁止やヘジファンド・プライベートエクイティーへの出資を禁止した。こうしたバーゼルⅢとドッド-フランク法・ボルカールールの導入により,金融危機の芽を摘むと同時に,仮に危機が生じた場合においては,自らのLiving willによって破綻処理を行うことが求められるようになったのである。
 Keywords: FDIC,金融危機,バーゼル規制,ボルカールール,ドッド-フランク法

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