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証券経済研究 第109号(2020年3月)

戦時末期の株式投資成果

平山賢一(東京海上アセットマネジメント㈱執行役員)

〔要 旨〕
 戦時末期の株式市場は,戦時金融金庫や日本証券取引所が無制限株式買付(株価維持オペレーション)を実施し,株式市場における価格統制が強化された時代に位置付けられる。この間の株式投資成果についての詳しい研究は多くないものの,日本政府により積極的な株価統制が強化された経緯を整理しておくことは,政府と市場の関係性を考える上で意義があると言えよう。
 本稿は,1924年6月から1944年11月までの株式投資成果を明らかにした昭和初期株式パフォーマンスインデックス(Equity Performance Index;EQPI)について,その期間を終戦(1945年8月9日)まで延長し,戦時末期の株式市場動向を整理するものである(延長期間部分をEQPI-EXTENDEDと称することにする)。その結果,市場介入が特に強化された1944年から1945年にかけての期間であっても,個別銘柄によって株価形成に差異が認められたことや,インデックスを通して市場特性が変化していたことなどが明らかになった。
 特に強調したい点は,1944年のリスク水準は12.2%弱まで上昇するものの,1945年(8月まで)は8.6%弱まで低下しており,特に3月中旬以降の無制限株式買付が大きな影響を与えた可能性がある点である。また,1945年(同)の投資成果は,無制限株式買付があったものの修正株価指数(Adjusted Price Index)が▲7.1%程度と大幅に落ち込んでおり,1944年末水準まで株価を引き上げるような結果には至らず,あくまでも無制限株式買付の3・9価格(東京大空襲直前の1945年3月9日の株価水準)を維持することに主眼があった点も明らかになった。尚,1945年の配当込修正株価指数(Total Return Index)は,▲3.9%程度にとどまっているが,東京小売物価指数の上昇率(+23.9%程度)が高く,実質リターンは大幅なマイナスに陥り,株式投資家の資産価値を毀損したと言える。
 これらの点から,戦時末期の株式市場に対する価格統制は,市場パフォーマンスの側面からみると必ずしも機能したとは言い切れないものであったと考えうる。

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