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出版物・研究成果等

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証券経済研究 第109号(2020年3月)

入札における価格ダンピングの原因とその対策について
—公共工事入札の例と株式市場分析—


辰巳憲一(学習院大学名誉教授・日本大学大学院講師)

〔要 旨〕
 入札制度は財・サービスの価格付けを組織的に行うように考案された仕組みである。様々な仕組みが知られており,新たに考案されつつある仕組みもある。この入札制度におけるダンピング問題を,公共工事入札を例に,分析してみる。まず公共工事とその入札の特徴を説明する。そして,公共工事入札を,入札理論のなかで位置付けた上,IPO(新規株式公開)に係わる入札,品貸入札などの株式市場に係わる入札と比較する。さらに監査入札についても触れる。
 ダンピングとは,何らかの目的を達成するために,販売価格,請負・引き受けなどの価格を引き下げる行動である。なぜ入札において,そういう行動が行われるのかが本稿の主たる研究テーマである。
 もっとも注力するのは,日本の公共工事入札制度の変遷と残された課題を展開しながら,価格ダンピングの原因とその対策の妥当性について受注業者の経営とその産業構造に立ち入って考察する点である。特に,ダンピングによって生じる損失を受注業者はどのように吸収したり転嫁するのかを分析する。
 考察・分析の結果,どのような入札制度が望ましいのかの判断基準として,次の5点が妥当するようである。1)運営費用が低く,入札参加者にとっての取引費用も低いこと,2)ルールが簡易で相互に矛盾しないこと,そして公平で,入札参加者と一般の人々にとって理解可能であること,3)経済的に効率的であること,つまり,公共工事においては最も高い価値のある資産を低費用で構築できる者が落札すること,4)入札参加者による結託行為を避け,市場価格に関する良いシグナルを市場や社会に送ることができること,5)価格は高くないだけでなく,低く過ぎることもなく,価格の変動性を最小化することに寄与すること。

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