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証券経済研究 第109号(2020年3月)

長期保有株主を優遇する議決権行使制度
—tenure voting, loyalty shareまたはtime phased voting—


福本葵(帝塚山大学法学部教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 2018年11月30日,『リーン・スタートアップ』の著者エリック・リースは,LTSE(Long term stock exchange以下,LTSE)の開設をSECに申請し,2019年5月10日,申請は承認された。エリック・リースは当初,LTSEに上場する企業は,保有年数に比例して増加する議決権の制度を採用する必要があるとしていた。この制度は,tenure voting, loyalty share, time-phased voting(TPV)またはtime phase voting structure(以後,tenure voting)等と呼ばれている。この制度こそが,新取引所開設の目玉であった。しかし,最終的に2019年5月10日付のSEC承認の申請書には,制度の採用は明記されていない。
 アメリカでは,1980年代からtenure votingを採用する企業が現れた。これらの中には現在も継続中のものもある。また,フランスのフロランジュ法における二倍議決権は,tenure votingの一形態である。
 日本においては,tenure votingの例はないが,長期保有株主優遇型優待制度を設けている会社は増加傾向にある。
 近年,Alphabet(現Google), Facebook,Alibabaなど,IT企業を中心に多くの会社が複数議決権株式を採用している。複数議決権株式に対しては,短期投資家からの圧力を排除できるとする一方で,創業者等の内部者は少ない資本で多くの議決権を入手することができるため,内部者に支配権が偏り過ぎると機関投資家等からの批判が高まっている。
 一方,tenure votingは,長期保有の株主であれば,内部者に限らず誰に対しても追加的議決権が付与されるため,一株一議決権株式と複数議決権株式の,いわば折衷案として登場した。
 そこで本稿では,LTSEとはどのようなものか,LTSEが採用しようとしているtenure votingとは何か,tenure votingはどのようにして導入されたか,また,その現状について紹介し,考察している。

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